長沼毅氏が語る深海の極限環境生物と、宇宙に生命を探す見方

極限環境生物学者の長沼毅さんが、深海にすむ不思議な生きものから、地球の外に生命がいる可能性までを語っている動画です。ここでは、動画で紹介されている見方を話題ごとにたどりながら、研究報告などで確かめられることを短く添えていきます。

長沼毅氏が深海の生きものと地球外生命について語る動画のサムネイル

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生命を物理学の目で見るという考え方

長沼さんは、生命を生物学だけでなく、物理学の視点からもとらえていると話しています。

宇宙は乱雑さが増していく「エントロピー増大」の原理にしたがっているけれども、生命は自分の形を保ち、次の世代へとつないでいくという点で、局所的にその流れに逆らっているめずらしい存在だ、という見方が紹介されています。

確認できていること:物理学者のシュレーディンガーは、1944年の著書『生命とは何か』の中で、「生物体は負のエントロピーを食べて生きている」と述べたことで知られています。

光の届かない海底に広がる生態系

この動画では、光の届かない深海には、光合成とは別のしくみで命をつなぐ生きものがいると言っています。口も胃も持たないチューブワームは、体の中にすむ細菌が火山ガスのエネルギーを使って有機物をつくり、その細菌と共生して生きている、という説明です。

熱水噴出孔のまわりには、後頭部に赤外線カメラのような目を持つエビもいて、ほかでは見られない独自の生態系ができている、という話も出てきます。

確認できていること:研究報告によると、チューブワームの一種「リフティア・パキプティラ」では、体の中の共生細菌が硫化水素などを酸化して得たエネルギーで有機物をつくっていて、このしくみは「化学合成」と呼ばれています。エビについては、大西洋中央海嶺の熱水域にすむ「リミカリス・エクソクラータ」が、背中側の殻の下に、弱い光を感じる目のような器官を持つことが、1989年に学術誌『Nature』で報告されています。

塩分や熱、圧力、石油にも耐える生きもの

生きものが暮らせる環境の幅についても、いくつもの例が取り上げられています。塩分の濃さが大きくちがう環境でも生きられる微生物「ハロモナス・バリアビリス」や、セ氏122度という高い温度でも増える「メタノパイラス」が、その例として紹介されています。

さらに、地球でいちばん深い海の底よりもはるかに強い圧力に耐える大腸菌が選抜されたことや、有害な石油の中で幼虫の時期を過ごす「石油バエ」のような、例外的な生きもののことにも触れています。

確認できていること:海洋研究開発機構(JAMSTEC)の2008年の発表によると、中央インド洋海嶺の熱水域で見つかったメタン菌「メタノピルス・カンドレリ」の株は、高い水圧をかけた条件で、セ氏122度でも増えることが確かめられたとされています。また、石油バエ(学名 Helaeomyia petrolei)は、原油の中で育つことが知られている、ただひとつの昆虫とされています。

氷の下に海を持つエウロパとエンケラドス

深海の極限環境は、地球の外で生命を探すときのモデルにもなる、と長沼さんは話しています。そのうえで、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスには、エネルギー、有機物、液体という生命の3つの条件がそろっている可能性が高い、という見方が示されています。

とくにエンケラドスについては、水やメタン、有機物が実際に見つかっていることが取り上げられています。

確認できていること:NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、エウロパの氷の下には、地球の海をすべて合わせたおよそ2倍の水をたたえる、塩分を含んだ海があると考えられています。エンケラドスでも、探査機カッシーニの観測から、海の底に熱水噴出孔がある可能性が示されています。

小惑星の試料とパンスペルミア仮説

小惑星「リュウグウ」と「ベンヌ」から持ち帰られた試料から、DNAやRNAの材料になる5種類の核酸塩基がすべて見つかったことも、動画の中で取り上げられています。

そして、この発見によって、生命の材料が宇宙から運ばれてきたとする「パンスペルミア仮説」の現実味が増している、と語られています。

確認できていること:NASAの2025年1月の発表では、ベンヌの試料から5種類の核酸塩基と14種類のアミノ酸が見つかったものの、見つかったのは生命そのものではなく、生命の材料だと説明されています。パンスペルミア説は、スウェーデンの物理化学者アレニウスが1903年に唱えた考え方とされています。

地球の外からの電波を待つ探究

宇宙にはまだ多くの可能性が眠っていて、明日にも地球の外から電波のメッセージが届くかもしれない、という話も出てきます。人類はそうした期待を持ちながら探究を続けている、という見方です。

確認できていること:電波で地球外の知的生命を探す研究は、1960年に天文学者フランク・ドレイクがアメリカの国立電波天文台で行った「オズマ計画」から始まったとされ、このときは地球外からの信号は見つかりませんでした。

おわりに

海の底にすむ小さな生きものと、遠い衛星や小惑星の話は、一見すると別々の話題のようにも思えます。長沼さんの話をたどると、それらが「生命とは何か」というひとつの問いのもとでつながっているように感じられて、深い海と宇宙を少し身近に思えるかもしれません。

僕のひとりごと

深海の生きものが、こんなに過酷な環境で生きていることに、僕は驚きました。宇宙に生命がいる可能性も、少し身近に感じられました。

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