YouTubeチャンネル「VAIENCE バイエンス」の動画では、深海の生き物がなぜ大きな体を持つのか、というテーマが取り上げられています。この記事では、動画で紹介されている見方を話題ごとにたどりながら、確認できている事実を短く添えていきます。
深海巨大症とはどんな現象か
この動画では、陸上や浅い海にいる同じ仲間と比べて、深海の生き物がとても大きくなる現象を「深海巨大症」として紹介しています。
代表的な例として挙げられているのが、ダンゴムシの仲間でありながら体長50センチほどになるダイオウグソクムシや、体長が10メートルを超えるダイオウイカです。大きくなる理由は一つではなく、体の働きにかかわる影響と、環境に合わせた生き残りの戦略が複雑に組み合わさった結果だと語られています。
確認できていること:NOAA(アメリカ海洋大気庁)によると、ダイオウグソクムシの仲間は、ダンゴムシと同じ等脚類というグループの中で最も大きく、浅い海の仲間よりずっと大きいとされています。ロンドン自然史博物館によると、ダイオウイカはメスで13メートル、オスで10メートルほどまで育つと考えられています。
光の届かない海の食べ物事情
太陽の光が届かない深海では、生き物は浅い海から沈んでくる有機物に頼って暮らしていて、食べ物はとても限られている、と説明されています。しかも、いつ手に入るか分からない不定期なものだ、という話が出てきます。
こうした環境では、「一度にたくさん食べて、長いあいだの飢えに耐える」という戦略が有利になる、という見方が紹介されています。
確認できていること:NOAAによると、水深1,000メートルより深い海には光がまったく届かず、光合成も行われないとされています。上の層から降ってくる有機物は「マリンスノー」と呼ばれ、多くの深海の生き物の食べ物になっていると説明されています。
大きな体で飢えに備える
体が大きいほど、たくさんの栄養を体の中にためておくことができ、代謝を極端に落とせば、何年も食べずに生き延びることもできる、と語られています。
その実例として取り上げられているのがダイオウグソクムシです。大きな胃に餌をためこむことができ、水族館で飼われていた個体が5年以上も何も食べなかった記録がある、と紹介されています。
確認できていること:SoraNews24によると、鳥羽水族館(三重県)で飼育されていたダイオウグソクムシは、2009年1月2日に餌を食べたのを最後に何も口にせず、2014年2月14日に死ぬまで、5年と43日のあいだ絶食していたとされています。
点在するごちそうと、急がなくてよい成長
広い深海の中で、クジラの死骸が沈んだ場所のように有機物が集まるところは、島のように点々と散らばっている、という話が出てきます。
そうした環境では、急いで成長して早く子孫を残さなければならない競争が弱まり、長い時間をかけて育ち続ける余地が生まれる、という見方も示されています。
確認できていること:NOAAによると、海底に沈んだクジラの死骸は、やわらかい部分が数か月で食べ尽くされたあとも、骨が数年から数十年にわたって豊かな生き物の集まりを支えるとされています。
冷たい海でゆっくり長く生きる
水深1,000メートルを超える深海は、一年を通して水温が2〜4℃ほどと、とても冷たい世界だと説明されています。低い水温のもとでは代謝が大きく下がってエネルギーの消費が抑えられ、成長はゆっくりになる一方で、寿命がぐっと長くなる、という話が出てきます。時間をかけて育ち続けることで、体が大きくなりやすいという見方です。
さらに、低い温度で細胞そのものが大きくなることや、寒い場所ほど体が大きくなるという「ベルクマンの法則」との関わりにも触れています。甲殻類などでは、水圧ではなく水温が巨大化の主な要因だとする説も紹介されています。
確認できていること:NOAAによると、深海の平均水温は4℃ほどとされています。
冷たい水が支える酸素
深海の冷たい水には酸素が豊富に含まれている、という点も取り上げられています。代謝が低いぶん生き物が必要とする酸素は少なくて済み、その一方で周りからの酸素は豊富なので、大きな体を保ちやすい条件がそろう、と語られています。
巻貝などの研究でも、水中の酸素の量が体の大きさの上限を決める大事な要因の一つだと示されている、という話も出てきます。
確認できていること:アメリカ地質調査所(USGS)によると、冷たい水は温かい水よりも多くの酸素を溶かすことができるとされています。
すべての深海生物が大きくなるわけではない
一方で、深海の生き物がすべて巨大になるわけではなく、小さいままの生き物もたくさんいる、という点にも触れています。
2005年の研究などをもとに、クジラの死骸などを食べるスカベンジャー型の魚は深くなるほど大きくなる傾向がある一方、そうした点在する餌に頼らない魚は、逆に小さくなる傾向がある、と紹介されています。深海巨大症は単純な物理の法則だけで決まるものではなく、生き物ごとの食べ方や生き残りの戦略の違いから生まれる現象だ、という見方です。
確認できていること:この研究は、北東大西洋の水深800〜4,800メートルにすむ魚を調べたもので、2005年に英国王立協会の学術誌に発表されています。研究チームは、この違いを体の働きではなく、餌の散らばり方の違いなど生態的な理由で説明できるとしています。
おわりに
深海の生き物が大きくなる背景には、冷たい水や乏しい食べ物といった環境と、それぞれの生き物が選んできた生き方が重なっているようです。まだ分からないことの多い深海だからこそ、これからの調査でどんな姿が見えてくるのか、楽しみに待ちたいところです。
僕のひとりごと
昔、映画で巨大なイカが出てきたときは、「いやいや、こんなデカいイカがいるわけないだろ!完全に映画の世界じゃん!」と思っていました。
ところが時代が進んで、深海のことが少しずつ分かってくると、まさかの「本当にいるんかい!」という展開。ダイオウイカの存在を知ったときは、昔映画を見ながら笑っていた自分に「お前、ちょっと待て。案外こういうの本当にいるぞ」と言いたくなりました。
それ以来、映画を見るときの自分の感覚まで少し変わってしまいました。「こんなの現実にはあり得ないだろ」と思うような生き物や出来事が出てきても、「いや……もしかしたら本当にいるんじゃないか?」と考えてしまうんですよね。
深海なんて、まだ人間が知らないことだらけ。暗くて、ものすごい水圧がかかっていて、簡単には見に行けない場所に、想像を超える生き物が普通に暮らしていると思うと、それだけでワクワクします。
しかも、深海だけではありません。宇宙を見ても「いったい何があるんだ?」という謎だらけ。地球の海の底にも、宇宙にも、まだまだ人間が知らない世界が広がっていると思うと、本当に不思議ですよね。
こういう話を調べるたびに「なるほど、そういうことか!」と一瞬分かった気になるんですが、次の瞬間には「……いや、やっぱり分からん」となります。
深海の巨大生物、宇宙の謎、未知の生き物や現象……。世の中、思っている以上に「そんなの本当にあるの?」が普通に存在しているのかもしれません。
そう考えると、これから映画を見るときも、以前のように「そんなの映画だろ!」とは簡単に言えなくなりそうです。まあ、何でもかんでも「本当にいるかも」と考え始めたらキリがないんですけどね。
参考情報
- YouTube「深海の生物はなぜ巨大なのか?」
- NOAA Ocean Exploration「What is an isopod?」
- ロンドン自然史博物館「Sea monsters and their inspiration: Serpents, mermaids, the kraken and more」
- NOAA Ocean Exploration「What is the deep ocean?」
- NOAA Ocean Service「What is marine snow?」
- SoraNews24「Giant isopod No.1 found dead after more than five years of not eating」
- NOAA Ocean Service「What is a whale fall?」
- アメリカ地質調査所(USGS)「Dissolved Oxygen and Water」
- Proceedings of the Royal Society B「Trends in body size across an environmental gradient: A differential response in scavenging and non-scavenging demersal deep-sea fish」(2005年)



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