TBS CROSS DIG with Bloombergの動画で、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の高井研さんが、地球の生命がどこで、どのようにして生まれたのかについて語っています。「微生物ハンター」とも呼ばれる高井さんの見方を中心に、確かめられている事実をところどころに添えながら、内容をたどっていきます。
122℃で増える微生物と「微生物ハンター」
高井さんは、深海から未知の微生物を集めてくる「微生物ハンター」として紹介されています。この動画では、高井さんたちが見つけたメタン生成菌が、122℃という高い温度の中でも増えることができ、生命が生きられる温度の限界を示す世界記録になっていると言っています。メタン生成菌は、水素と二酸化炭素を取り込んでメタンを出す、アーキアと呼ばれる微生物の仲間だと説明されています。
病院で医療器具の滅菌に使われるオートクレーブの条件(動画では121℃で15分と紹介されています)と比べながら、それを上回る温度で増えることの意外さも語られています。この記録は長いあいだ破られていない、という話も出てきます。
確認できていること:JAMSTECの2008年の発表と論文によると、この菌はインド洋中央海嶺の「かいれいフィールド」の熱水(水深2,450メートル)から分離されたメタン生成菌(Methanopyrus kandleri 116株)で、ふつうの培養条件では85℃から116℃で育ち、20メガパスカルの高い圧力をかけた条件では122℃まで増えることが確かめられたとされています。それまでは、再現できる最高の記録は113℃とされていました。
生命の舞台は陸の温泉か、深海の熱水か
生命がどこで生まれたかについては、陸の上の温泉で生まれたという説と、深海熱水噴出孔で生まれたという説があります。高井さんは、今の地球科学や極限環境の生物学から見ると、深海熱水噴出孔の説がとても有力だと話しています。
その理由として挙げられているのが、冥王代と呼ばれる約40億年前の地球の姿です。マグマの海が冷えて間もない当時の地球には、今のような山脈や大陸はほとんどなく、表面は平均で水深3,000から4,000メートルほどの海に覆われていた、という見方が紹介されています。陸地そのものがほとんど無かったのなら、陸の上で生命が生まれた可能性は低いのではないか、と語られています。
確認できていること:2021年に学術誌『Life』に掲載された総説によると、冥王代の地殻はほとんど残っていないため、当時の陸地の広さを推し量るのはとても難しく、冥王代の終わりごろから太古代のはじめにかけては、海の上に出た陸地が島に限られていた可能性があるとされています。一方で、生命の起源にとって陸地が欠かせなかったかどうかは、まだ答えの出ていない問いだとされています。
光の届かない深海が「安全な場所」だった理由
初期の地球の表面には、DNAを傷つける強い紫外線が降り注いでいて、空気中には酸素がほとんどなかった、という話が出てきます。生まれたばかりの生命にとって、酸素はむしろ毒のようなものだったという見方です。
一方で、日光の届かない深海の熱水のまわりには、地球の内部から水素や二酸化炭素、メタン、さらには電気といったエネルギーのもとが、安定して届けられていたと語られています。暗い深海こそが、か弱い生命にとって心地よく安全な場所だったのではないか、という考え方です。高井さんは、光合成にも、酸素を使う呼吸にも頼らずに、こうしたものを使って生きるしくみが、40億年前から変わらずに深海の底で続いているとも話しています。
確認できていること:JAMSTECと理化学研究所が2017年に発表した研究では、沖縄トラフの深海熱水噴出孔のまわりの海底で自然に電気が生まれていることが確かめられ、噴出孔を中心に少なくとも約100メートルの範囲で観測されたとされています。さらに、JAMSTECなどが2026年6月に発表した研究では、深海熱水噴出孔の近くにすむ細菌の中に、電気のエネルギーを使って二酸化炭素から体の材料をつくり、増えることができるものがいることが、実験で示されたとされています。
すべての生きものの共通祖先「LUCA」
生命の始まりを考えるうえで、「生命の起源」と「LUCA」が混同されやすいという点も取り上げられています。LUCA(Last Universal Common Ancestor)は、今いるあらゆる生物のゲノムをさかのぼっていくとたどり着く、地球のすべての生命の共通祖先だと説明されています。
動画によると、LUCAはすでにDNAと遺伝のしくみを持っていて、深海熱水噴出孔のような環境に住んでいたことが、ゲノムの解析から推定されているとのことです。つまり、LUCAは生命の「最初の一歩」そのものではなく、そこからさらに先に進んだ姿だという見方です。
確認できていること:2016年に学術誌『Nature Microbiology』に掲載された研究では、LUCAは酸素を使わず、水素に頼って二酸化炭素を取り込む、熱を好む生きもので、熱水のある環境に暮らしていたと推定されています。また、2024年にイギリスのブリストル大学などのチームが『Nature Ecology & Evolution』に発表した研究では、LUCAが生きていたのは約42億年前と推定されています。
遺伝子より先に「代謝」があったという考え
LUCAが生まれる前の時代について、遺伝子を持たない「代謝生命」がいたのではないか、という新しい見方が紹介されています。遺伝の情報を持つDNAやRNAと、体をつくるタンパク質とを結びつける複雑なしくみは、一朝一夕にはできあがらない、というのがその出発点です。
動画で語られているシナリオでは、脂質やタンパク質でできた小さな袋の中で、エネルギーを取り込んで自分を保ち、増えていく「代謝生命」が、生まれては消えることをくり返します。そうして何億年もの時間をかせぐうちに遺伝のしくみを取り込み、強い持続力と進化する力を持ったLUCAへとつながった、という流れが描かれています。高井さんたちの研究で、この「代謝生命」を実験室でつくり出せる段階にまで近づいている、という話も出てきます。
この考え方は、高井さんの生命の定義にもつながっています。高井さんは、ノーベル賞を受けたクリスチャン・ド・デューブ氏の考えに近い、「エントロピーが増えていく流れに逆らって、自分を保ち続ける代謝のしくみ」を生命と見る立場をとっていると話しています。遺伝子による進化は環境の変化に合わせるための手段であり、深海の熱水のように40億年も変わらない環境であれば、進化や遺伝子を持たずに代謝をくり返すだけの存在も、生命と認めるべきではないか、という見方です。
確認できていること:ド・デューブ研究所によると、クリスチャン・ド・デューブ氏は、細胞の構造と働きのしくみに関する発見で、1974年のノーベル生理学・医学賞をほかの2人とともに受けています。
単独では生きられない「不完全なゲノム」
自然界にいる微生物の99%はまだ培養されておらず、「生物のダークマター」と呼ばれている、という話が出てきます。光ピンセットで細胞を1つずつ取り出してゲノムを読む方法や、環境の中の遺伝子をまとめて読み解くメタゲノム解析によって、こうした微生物の姿が少しずつ見えてきたと語られています。
動画では、これまでの生物学には、生きものはそれぞれ1つの完結した設計図(ゲノム)を持ち、単独で生きているという前提があったと説明されています。ところが、海底や地下の深いところにすむ微生物を調べると、大事な遺伝子が欠けた「不完全なゲノム」を持つものだらけだった、という発見が紹介されています。そうした微生物どうしが栄養や働きを互いに補い合い、群れ全体で1つの生命のシステムのようにふるまって生きているという見方で、高井さんは、生命は「独立した個体」だけでなく「不完全なものの集まり」としてもあり得る、という大きな考え方の転換が起きていると話しています。
確認できていること:2015年に科学誌『Nature』に掲載された研究では、培養に成功した例のない細菌の大きなグループについて800近いゲノムを調べ、CPR(candidate phyla radiation)と名づけたこのグループが、細菌全体の15%以上を占める可能性があるとしています。そのゲノムはどれも小さく、多くは生きるのに必要な物質を自分でつくる経路の多くを持っていないと報告されています。
エンケラドスの海と「必然か偶然か」
深海の研究は、宇宙で生命を探す研究にもそのままつながっている、という見方が示されています。地球で生命が生まれた過程が分かったとしても、それが地球という環境だけで起きた偶然なのか、宇宙のどこでも起きる物理現象としての必然なのかは、地球だけを調べていても分からない、と高井さんは話しています。調べられる例が地球の1つしかない「N=1」の問題で、ほかの天体で生命を見つけて比べることで、はじめて科学的に判断できるという考えです。
この動画では、太陽系の中で内部に海を持つ天体を「オーシャンズ13」と呼び、中でも土星の衛星エンケラドスに注目しています。エンケラドスの氷の下には地球の深海熱水とよく似た海があり、宇宙空間に向けて水を噴き出していると紹介されていて、その噴き出しの中を探査機で通り抜けながら試料を集めて持ち帰れば、氷を掘らずに生命を探せる、と語られています。これは約500億円規模の予算で実現できる、という話にも触れています。
さらに高井さんは、無機物から生命が生まれる瞬間までは、どこでも通じる物理現象として書き表せる一方で、生まれた生命がどう生き延び、多様になっていくかは、環境とのかかわりの中で予測のできない物語のようなものだ、とも話しています。
確認できていること:NASAによると、エンケラドスは直径およそ500キロメートルの小さな衛星ですが、噴き出しは衛星の内部に広がる全球的な海から供給されていて、その海には、ミネラルを含む熱い水を出す熱水噴出孔がある可能性が高いとされています。
おわりに
生命がどこで、どのようにして生まれたのかという問いには、まだはっきりとした答えは出ていません。それでも、深海の微生物を調べることが、宇宙のどこかにいるかもしれない生命を考える手がかりにもなっているという話からは、身近な地球の海の奥深さがあらためて感じられます。
僕のひとりごと
不思議で分からないことに興味津々な僕なんですが、こういう話を聞いていると、改めて思う。
地球って、まだまだ分からないことだらけじゃない???
今回の深海の生命誕生の話もそうだけど、40億年前の地球で何が起こっていたのかとか、LUCAの前に「遺伝子を持たない生命」がいたかもしれないとか、122℃でも普通に生きている微生物がいるとか……。
もう僕の頭の中では、「??????」が大行進しております。
しかも、深海だけじゃない。宇宙なんて、さらに意味が分からない。
そういえば、かなり前にNASAが「地球外生命の痕跡か?」みたいなニュースを発表して、地球外微生物の存在を示す可能性があるとか、ものすごく話題になった記憶があるんですよね。
「おお!ついに宇宙人発見か!?」と当時の僕もテンションが上がったような気がする。
ところが、その後どうなったの???……っていう。
結局、あのニュースは一体どういうことだったのか。本当に生命の痕跡だったのか、それとも「生命っぽく見えたけど違いました」だったのか。こういうのが、僕には全然分からない。
でも、そこが面白いんですよね。
深海には、太陽の光も届かないような場所で生きる微生物がいて、122℃でも繁殖する生命までいる。そして宇宙には、土星の衛星エンケラドスのように、氷の下に巨大な海があると考えられている天体まである。
「そこに生命がいたらどうする?」なんて言われたら……
そりゃ気になるに決まってるだろ!!!
ただ、僕の場合は科学的に分析できるほど頭が良くない。
「生命誕生のメカニズムが……」と言われた瞬間、「ほうほう……」と分かったフリをしながら、頭の中では完全にフリーズ。
そして最終的に出てくる感想は、「いやぁ……凄いなぁ……」これだけです。
深海も宇宙も、調べれば調べるほど謎が増えていく。
生命って何なの?そもそも、どうやって始まったの?宇宙のどこかにも生命はいるの?地球の生命は偶然なの?それとも必然なの?
もう疑問だらけ。
でも、こういう「分からないことだらけ」なのが、たまらなく面白いんですよね。
僕には難しいことは理解できなくても、「もしかしたら、とんでもない何かがまだ隠れているんじゃないか?」と思わせてくれる。
結局、僕に理解できるのは、「深海すげぇ!」「宇宙すげぇ!」「生命ってすげぇ!」この3つくらい。
でも、それだけでも十分ワクワクできる僕なのでした。
参考情報
- YouTube「【生命は地球でいかにして生まれたのか】微生物ハンター・高井研/全地球生命の祖先「LUCA」とはなにか/マリアナ海溝で世界記録を打ち立て生命の存在限界を探る【ULTRA SCIENCE】」
- JAMSTEC「新しい高圧培養法による生命の最高生育温度記録更新と高圧メタン生成 ~122℃で増殖し、重い炭素に富んだメタンを生成する 超好熱メタン菌の培養に成功~」(2008年)
- PNAS「Cell proliferation at 122°C and isotopically heavy CH4 production by a hyperthermophilic methanogen under high-pressure cultivation」(2008年)
- Life「Was There Land on the Early Earth?」(2021年)
- JAMSTEC・理化学研究所「深海熱水系は「天然の発電所」-深海熱水噴出孔周辺における自然発生的な発電現象を実証-」(2017年)
- JAMSTEC・横浜市立大学・東京大学「深海熱水噴出域に電気エネルギーを使って増殖する細菌がいることを実証」(2026年)
- Nature Microbiology「The physiology and habitat of the last universal common ancestor」(2016年)
- Nature Ecology & Evolution「The nature of the last universal common ancestor and its impact on the early Earth system」(2024年)
- de Duve Institute「Our history」
- Nature「Unusual biology across a group comprising more than 15% of domain Bacteria」(2015年)
- NASA Science「Enceladus」
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