カリフォルニア大学バークレー校教授の理論物理学者、野村泰紀さんと、量子コンピュータを研究する藤井啓祐さんが、量子コンピュータの今とこれからについて語り合う対談動画です。動画の中で語られた見方を話題ごとにたどりながら、記録などで確かめられることも短く添えていきます。
量子力学の100年と、粒子を操る技術
対談は、量子力学が生まれてからの長い歩みにも及んでいます。量子力学は1925年に誕生し、それから約100年にわたって研究が積み重ねられてきた、と語られています。
2000年代に入ると、原子などの小さな粒子を1つずつ精密に制御する実験技術が大きく進み、長く物理学者の理論の中の概念だった量子コンピュータが、実際に作れるものへと近づいていった、という流れが紹介されています。
確認できていること:ユネスコによると、国連総会は2024年6月に、量子力学の100周年にあたる2025年を「国際量子科学技術年」とすることを宣言しています。また、スウェーデン王立科学アカデミーの発表によると、2012年のノーベル物理学賞は、1つ1つの量子系を測定し、操作できるようにした実験手法に贈られています。
0と1が重なり合う量子ビットと「干渉」
この動画では、量子コンピュータの強みの出発点として、「重ね合わせ」という性質が取り上げられています。普通のコンピュータは情報を0か1のどちらか一方で扱いますが、量子コンピュータでは、たとえば「60%は0、40%は1」のように、0と1が確率的に重なり合った状態を作れる、という説明です。0の世界と1の世界が同時にあるパラレルワールドのような状態を作り、00、01、10、11……といった多くのパターンをまとめて表せる、というたとえも出てきます。
ただし、重ね合わせを作るだけでは計算の役には立たない、という点にも触れています。重なり合った波どうしを影響させ合う「干渉」を使い、求めたい答えの確率だけを強めて、いらない結果を打ち消していくことで、難しい問題を速く解けるようになる、と語られています。
確認できていること:IBMの解説によると、量子ビットは測定されると、重ね合わせの状態から0か1のどちらかの結果に定まるとされていて、干渉は「量子コンピューティングのエンジン」と表現されています。
離れていてもつながる「量子もつれ」
量子コンピュータを支えるもう一つの性質として、「量子もつれ」も取り上げられています。離れた場所にある粒子どうしが、まるで状態を連動させているかのようにふるまう、不思議な現象として紹介されています。
複数の量子ビットの間でこのもつれを作ることで、複雑なデータの結びつきを表したり、量子エラー訂正を行ったりできるようになる、という見方です。
確認できていること:スウェーデン王立科学アカデミーの発表によると、2022年のノーベル物理学賞は、もつれた光子を使った実験で量子情報科学を切り開いた、アラン・アスペ氏、ジョン・クラウザー氏、アントン・ツァイリンガー氏に贈られています。同じ発表では、この流れをくむ研究の分野に、量子コンピュータも含まれると説明されています。
巨大企業の参入と「量子超越性」
長く物理学者の知的好奇心の対象だった量子コンピュータが、大きな産業へと変わっていった流れも語られています。2014年ごろに「本当に作れそうだ」という見通しが立ち、Google、IBM、富士通などの企業が次々に参入して、大きな投資と開発競争が始まった、という話が出てきます。
その節目として挙げられているのが、2019年にGoogleが発表した「量子超越性」の実証です。スーパーコンピュータでは1万年、あるいは数日かかるとされる計算を、量子コンピュータが数百秒で終えたことで、スーパーコンピュータを超える計算の力が現実のものとして示された、と語られています。
確認できていること:2019年に学術誌「Nature」に掲載されたGoogleなどの研究チームの論文では、53量子ビットのプロセッサが約200秒で終えた計算に、最先端のスーパーコンピュータでは約1万年かかると見積もられています。これに対してIBMは同じ年のブログで、同じ計算は工夫しだいで2.5日でシミュレーションできるという見積もりを示しています。
ノイズとの戦い、量子エラー訂正への道
一方で、今の量子コンピュータはノイズの影響を受けやすく、まだ課題が多いことにも触れています。これから5〜10年のうちに、ノイズを抑え込む「量子エラー訂正」の技術を確立することが、世界の研究のいちばん大きな目標になっている、という見方が紹介されています。
その土台として名前が挙がるのが、物理学者のアレクセイ・キタエフ氏らが考えた「位相推定」のアルゴリズムや、「魔法状態」と呼ばれる考え方です。こうした理論が、ノイズを乗り越えるための基礎を支えている、と語られています。
確認できていること:キタエフ氏らが2005年に学術誌「Physical Review A」に発表した論文では、ノイズを含んだ補助の量子ビットを精製して「魔法状態」を作り、基本的な操作と組み合わせることで、あらゆる量子計算ができることが示されています。
AIと量子コンピュータが支え合う関係
AIと量子コンピュータの関係も、大きな話題として取り上げられています。ChatGPTのようなAIは、インターネット上の大量の言葉のデータを学んで進化してきましたが、薬や新しい材料の開発に欠かせない、分子のふるまいや化学反応のデータは、現実の実験やスーパーコンピュータの計算だけでは、まったく足りていないと言っています。
そこで、量子コンピュータを「制御できる自然界」として使い、精密なシミュレーションのデータをたくさん作って、AIに学ばせる拠点にする、という見方が紹介されています。さらに、量子回路はとても高い次元の空間を扱えるため、普通のコンピュータでは分析が難しい複雑なデータを学習したり、見分けたりする「量子AI」の分野でも力を発揮する、という話も出てきます。
反対に、AIが量子コンピュータの研究を速めている面にも触れています。生成AIが、量子アルゴリズムのプログラミングや、複雑な数学の証明を考える時の相談相手になり、研究者の開発のスピードを大きく上げている、という話です。
確認できていること:藤井さんも著者に名を連ねる2018年の論文(学術誌「Physical Review A」に掲載)では、量子回路のパラメータを少しずつ調整して課題を学ばせる「量子回路学習」という方法が提案されています。
新しい世代が受け止める量子の世界
天動説から地動説への転換のように、人の物の見方は時代とともに変わっていく、という話も出てきます。
かつての量子力学は、直感に反する不思議なものとして戸惑いをもって受け止められていた一方で、今の若いコンピュータサイエンティストは、「状態はベクトルで表す」といった考え方を、プログラミング言語のルールのように自然に受け入れていて、それが新しい応用の開発を後押ししている、と語られています。
おわりに
量子コンピュータの話は、難しい言葉が多く、遠い世界のことのように感じられるかもしれません。それでも、100年かけて積み重ねられてきた研究が、AIとも結びつきながら新しい段階へ向かっている、という見方が伝わってくる対談でした。これから実用にどう近づいていくのか、ゆっくり見守っていきたいところです。

僕のひとりごと
量子コンピュータについて調べてみたんですが……正直に言います。
僕の頭では、まったく理解できない世界です!
「0と1が同時に存在する?」「量子もつれ?」「干渉?」「量子エラー訂正?」「魔法状態???」
……もう途中から「何の魔法の話ですか?」という感じです。
普通のコンピュータなら、「0か1か」というのは何となく理解できます。パソコンを使っている以上、「デジタルってそういうものなんだろうな」と納得できます。
ところが量子コンピュータになると、いきなり世界のルールそのものが変わってしまう。「0でもあり1でもある」。この時点で、僕の頭の中は完全にフリーズです。
さらに「量子もつれを利用して……」とか「干渉によって正解の確率を高めて……」なんて説明を読んでいると、いやいやいや、そんなことを人間が考えて、実際に機械まで作ってるの?と思ってしまいます。
僕なんて、スマホの設定を変更するだけでも「これ押して大丈夫かな?」と不安になるレベルなのに、世界の最先端では、人間が原子や電子レベルの世界を操って計算機を作っている。同じ人間なのに、どうなっちゃってるの?という感じです。
もちろん、量子コンピュータが今すぐ何でも超高速で計算できるわけではなく、まだまだノイズやエラーなどの大きな課題があるようです。でも、それを聞いても「じゃあ、まだ大したことないんだな」とは全然思えません。むしろ、「これでまだ発展途中なの?」という驚きのほうが大きいです。
しかも、これからAIと量子コンピュータが組み合わさって、薬や新素材の開発、自然界のシミュレーションなどにも使われる可能性があるという。もう、僕の理解できる世界を完全に飛び越えています。
今回の記事を書きながら、量子コンピュータの凄さを理解したというより、「人間って、とんでもないところまで来ちゃったんだな……」という感想のほうが強く残りました。
難しすぎて、説明はできません!でも、「なんか凄いことをやっている!」ということだけは、素人の僕にもなんとなく分かりました。
そして、僕には意味不明なこういう世界を理解して、実際に研究している人たちを見ると、本当に尊敬します。
僕はこれ以上深入りすると頭から煙が出そうなので、この辺で撤退します。量子コンピュータ……恐るべし!
参考情報
- YouTube「【野村泰紀×藤井啓祐】世界を変える量子AI/物理学界に革命を起こした研究者/人類史最大の発明「量子コンピュータ」の現在と未来【教養としての量子コンピュータ】」
- UC Berkeley Physics「Yasunori Nomura」
- 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(QIQB)「Quantum 100(世界の量子専門家100人)に大阪大学 藤井啓祐教授が選出!!」
- UNESCO「International Year of Quantum Science and Technology」
- スウェーデン王立科学アカデミー「The Nobel Prize in Physics 2012」
- IBM「What is quantum computing?」
- スウェーデン王立科学アカデミー「The Nobel Prize in Physics 2022: Entangled states – from theory to technology」
- Nature「Quantum supremacy using a programmable superconducting processor」(2019年)
- IBM Quantum Blog「On “quantum supremacy”」(2019年)
- arXiv「Universal Quantum Computation with ideal Clifford gates and noisy ancillas」(Sergei Bravyi、Alexei Kitaev)
- arXiv「Quantum Circuit Learning」(Kosuke Mitarai、Makoto Negoro、Masahiro Kitagawa、Keisuke Fujii)


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