時間は存在しないとは何か、物理学者ロヴェッリ氏の見方

宇宙・物理

「時間は存在しない」という、少し驚く言葉を書名にした本があります。著者は、イタリアの物理学者カルロ・ロヴェッリさんです。

この記事では、この本で語られている時間の見方を、物理が専門ではない人にも読みやすいように、話題ごとにたどっていきます。

時間は存在しないと語る物理学者

ロヴェッリさんの『時間は存在しない』(NHK出版)は、私たちが当たり前だと思っている「一様に流れる時間」というイメージを問い直す内容として紹介されています。難しいテーマですが、日本語版は5万部に達したといわれ、多くの人に読まれているようです。

ロヴェッリさんは、相対性理論と量子論をつなぐ理論のひとつ、ループ量子重力理論の提唱者の一人とされています。「ホーキングの再来」と呼ばれることもあるそうです。

確認できていること:文春オンラインによると、ロヴェッリさんはイタリア生まれの理論物理学者で、ループ量子重力理論の提唱者の一人と紹介されています。日本語版は2019年8月に発売され、同記事の時点で7刷5万部とされています。

時間の考え方は移り変わってきた

時間がどう考えられてきたかについて、大まかな整理が紹介されています。アリストテレスは、時間を物事の変化を数えたものと捉え、ニュートンは、物事とは関係なく誰にでも同じように流れる絶対的なものと考えた、という流れです。

そのうえでアインシュタインは、重力や動きによって時間の進み方が変わると考えたとされます。いま多くの人が持つ「時間は誰にでも同じ速さで流れる」という感覚は、ニュートン流の考え方が広まったものだという見方も紹介されています。

山の上と低地で変わる時間の進み方

本の最初のほうでは、場所によって時間の進み方が変わるという話が出てくるそうです。地球のように重いものの近くでは時間の進みがわずかに遅くなるため、山の上よりも低地のほうが、時間はゆっくり進むといいます。

その差はごくわずかで、日常で気づくほどではありません。それでも「時間はどこでも同じ速さ」とは言い切れない、という点が語られています。

確認できていること:理化学研究所と東京大学などの研究チームは、東京スカイツリーの地上階と展望台に置いた光格子時計を使い、約450メートルの高低差での時間の進み方の違いを観測したと、2020年4月に発表しています(JST)。

過去と未来を分ける法則とブロック宇宙論

卵は割れると元に戻らず、お湯は冷めていきます。私たちは時間が過去から未来へ流れていると感じますが、物理学の基本的な法則の中には、過去と未来を区別するものが見当たらないという話が紹介されています。では、なぜ流れているように感じるのか、という疑問には、本の後半で哲学や脳科学の話も交えて答えていくそうです。

こうした文脈でよく挙げられるのが、ブロック宇宙論です。過去・現在・未来がまとめて存在していて、時間が流れて見えるのは錯覚だ、という考え方です。アインシュタインも、過去・現在・未来の区別は、しつこく続く幻にすぎないという趣旨の言葉を残したとされています。

確認できていること:Quote Investigatorによると、この言葉は、アインシュタインが1955年3月21日に、亡くなった友人ベッソさんの家族へ宛てた手紙にあるものです。原文はドイツ語で、英語版は訳によって言い回しが異なります。

量子重力の世界で時間が式から消える

相対性理論と量子論をひとつにまとめようとする試みでは、ウィーラー=ドウィット方程式という式が使われます。この式で2つの理論を統合しようとすると、時間が式から消えてしまうといわれ、物理学ではこれを「時間の問題」と呼ぶそうです。

確認できていること:量子宇宙論と時間の問題を扱った論文(arXiv)では、ウィーラー=ドウィット方程式には時間を表すパラメータが含まれず、そこから時間の変化をどう取り戻すかが「時間の問題」として議論されているとされています。

専門家の間でも意見は分かれている

時間は幻だとする説には、反対の意見もあるそうです。イギリスの物理学者ジュリアン・バーバーさんは、時間は幻だと考える立場として知られています。一方で、時間が幻ではないと考える研究者もいるとされています。

反対の立場の例として挙げられるのが、イリヤ・プリゴジンさんです。時間は幻だという考え方には否定的だった人物として紹介されています。

また、ブロック宇宙の見方も、「出来事が次々に生まれていく」という見方も、これまでの観測とはどちらも矛盾しないという指摘があります。決定的な実験が見つかるまでは、どちらが正しいか決められない状況のようです。

さらに、「時間は絶対に必要なものではない」ということと「時間は役に立たない」ということは別の話だ、という見方もあります。時間を特別扱いしなくても宇宙を説明できるかもしれませんが、だからといって時間という考え方が意味を失うわけではない、という整理です。

確認できていること:Times Higher Educationの書評によると、バーバーさんは、ウィーラー=ドウィット方程式をもとに、時間は幻だと論じています。同じ書評で、プリゴジンさんは、時間は幻だという考え方に否定的な立場だと書かれています。また、arXivの論文では、物理的な観測はブロック宇宙の見方とも、出来事が次々に生まれる見方とも矛盾せず、決定的な実験がなければ、どちらも哲学の領域にとどまると述べられています。

おわりに

「時間は存在しない」という言葉は強い響きですが、紹介されている内容をたどると、時間の見方そのものを見直そうという問いかけが中心のようです。専門家の間でも意見が分かれていて、まだ決着のついていない話題です。

身近な時計や暦の感覚と、物理学の見方との距離を、ゆっくり考えてみるきっかけになりそうです。

僕のひとりごと

ここまで調べてみて、正直な感想を言うと、難しいところはサッパリ分かりませんでした。特に方程式が出てきたあたりは、僕にはお手上げです。毎日、時間に追われて生活しているのに、物理学者の世界では「そもそも時間なんて存在しないのかもしれない」という話が出てくるのですから、何が何だか分かりません。

ただ、こんな僕でも分かったことがあります。それは、「時間は誰にとっても同じ速さで流れている」という考え方が、実は当たり前ではないということです。山の上と低地では、重力の違いによって時間の進み方にほんのわずかな差が生まれます。さらに、過去・現在・未来がひとつの宇宙に存在していると考えるブロック宇宙論という見方まであります。

昨日の自分も、今の自分も、まだ経験していない未来の自分も、別々の瞬間として存在しているのかもしれない。もちろん、これはブロック宇宙論から連想した僕の勝手な想像です。考えれば考えるほど、頭が混乱してきます。

そして、専門家であっても、「時間とは何なのか」という根本的な問いに、誰もが納得する答えを出せているわけではない、というのも印象に残りました。まだ分かっていないことがあるからこそ、面白いのだと思います。

僕自身は、時計の針が進むのを見れば時間が流れていると感じますし、鏡を見れば、いつの間にか年を取ったなと思わされます。それでも、もし時間が普段考えている姿とはまったく違うものだったらと考えると、いつもの景色が少し違って見えてくる気がします。当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかった。今回いちばん興味を持ったのは、まさにこの部分でした。

さて、あなたはどう思いますか。時間は本当に存在すると思いますか。それとも、僕たちが時間というものを感じているだけなのでしょうか。

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